【相談】
精神疾患で休職していた従業員が復職しましたが、再度会社を休み始めてしまいました。改めて休職を命じることを考えていますが、休職期間はリセットされて一からということになりますか。
【回答】
休職とは、従業員側に労務提供が不能又は不適当な事由が生じた場合に、会社が当該従業員に対し、労働契約自体は存続させつつも労務提供を免除することをいいます。休職事由には様々なものがありますが、特に重要なものとして、ご相談にもあります精神疾患を含む私傷病の問題があります。このような休職制度は法令上に定めがあるわけではなく、会社の規定に基づくものですので、会社の就業規則上どのように定められているかによることになります。
この点について、近時、精神疾患を含む私傷病により勤務することができない従業員が増加していること、精神疾患の特徴として再発を繰り返すことが指摘されており、一定のルールのもと休職させる必要があるため、休職期間の通算を定める取扱いが多くなっています。このような取扱いをするために、次のような規定が設けられています。
「復職後6か月以内に同一又は類似の事由により欠勤し、あるいは通常の労務提供をすることができない状況に至った場合には、直ちに休職を命じるものとし、復職前の休職期間と通算する。」
休職の長期化を回避するために、同一症状での休職となる場合に休職期間を通算することは当然として、この規定のポイントは、「類似」の症状による場合も通算することを可能にする点にあります。精神疾患には、「うつ病」、「双極性障害」、「適応障害」、「強迫性障害」など種々の病名がありますので、異なる病名ではあるけれども実質的にみて同一の原因による再発とみられる場合に休職期間の通算ができないとなれば、通算の規定が形骸化してしまうことになるためです。
ご相談のケースでも、このような通算規定が就業規則に存在し、復職後6か月以内に復職前の精神疾患と同一又は類似の疾患が発症したものとみられる場合には、休職期間はリセットされず、復職前の休職期間と通算することになります。
例えば、ある従業員の私傷病休職期間が1年(12か月)までとなっており、4か月の休職後に復職して、その後、6か月以内に復職前の精神疾患と同一又は類似の疾患が発症したものとみられて休職を命じる場合には、残りの休職期間は、復職前の休職期間を除いた8か月ということになります。
なお、通算規定がない場合には、休職期間を通算することができず、新たな休職として取り扱うことになりますので、休職期間もリセットされることになります。休職の長期化を回避するために通算規定は有用ですので、今後の対応として通算規定を新たに設けることも考えられます。
ただし、この場合、従業員からすれば、従来の取扱いと比べて休職が制限されることになりますので、労働条件が従業員にとって不利益に変更されることになります。労働条件の不利益変更については、従業員等の合意を得て行うのが原則ですが、合意がない場合であっても、変更後の内容を従業員に周知させた上で、変更内容が合理的であるときには、例外的に行うことが可能です。
この辺りは専門的な判断を要する分野でもありますので、ぜひ経験豊富な弁護士にご相談することをお勧めします。