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打消し表示の注意点

色んな広告を見ていると「※個人差があります」というのをよく見かけます。自社商品を魅力的に伝える広告にするために、その効果を少しぐらい誇張しても、「※個人差があります」との表現をつけておけば大丈夫でしょうか。

1 打消し表示さえしておけば、虚偽の効果を謳ってもいいの?

広告について、効果について魅力的に書いているような部分を強調表示、「※個人差があります」などの制限を加えている部分を打消し表示といいます。

強調表示と打消し表示との関係で注意すべきは、強調表示が示している内容が、商品・サービスの実際の効果・性能等を正確に反映していることが原則であり、打消し表示は、強調表示だけで一般消費者が認識できない例外条件、制約条件等がある場合にあくまで例外的に使用されるべきものである点です。

したがって、明らかに虚偽ないし裏付けるための根拠がないような効果を謳って魅力的に見せた上で、「※個人差があります」としても、このような表記は違法(優良誤認)となるものといえます。

2 打消し表示をする場合、どのようなことに注意したらいいの?

上記の通り、打消し表示は、強調表示と対になるものであり、強調表示のみでは認識しにくい例外条件等を表示するものです。

したがって、打消し表示を行う際には、➀打消し表示の文字の大きさや、②強調表示の文字と打消し表示の文字の大きさのバランス、③打消し表示の配置箇所、④打消し表示と背景との区別等を考慮しなければならないとされています。

打消し表示をする際には、➀打消し表示の文字が小さすぎないか、②打消し表示の文字の大きさや色が、強調表示に比べて著しく見にくいものではないか(大きさは強調表示と同程度の大きさ、文字の色は強調表示と同じ色かそれより目立つものがよいと思われます)、③強調表示と打消し表示の表示箇所が離れていないか、④打消し表示の色が背景の色によって霞んで見にくくなっていないか、等を注意して確認するようにしてください。

ポイントは広告の強調表示を見た消費者が、それとセットで打消し表示やその内容を認識できるようにするという点です。

3 各考慮要素に関する実務上の視点

(1)打消し表示の文字の大きさ

打消し表示の文字の大きさは、消費者に打消し表示が認識されない大きな理由の1つであると考えられます。

したがって、事業者が打消し表示を行う際には、消費者が手にとって見るような表示物なのか、鉄道の駅構内のポスター等の消費者が離れた場所から目にする表示物なのかなど、表示物の媒体ごとの特徴も踏まえた上で、それらの表示物を消費者が実際に目にする状況において適切と考えられる文字の大きさで表示する必要があります。

(2)強調表示の文字と打消し表示の文字の大きさのバランス

打消し表示は、強調表示といわば「対」の関係にあることから、強調表示と打消し表示の両方を適切に認識できるように文字の大きさのバランスに配慮する必要があります。

具体的には、打消し表示の文字の大きさが強調表示の文字の大きさに比べて著しく小さい場合、消費者の注意が印象の強い強調表示に向き、打消し表示に気付くことができないことが想定できます。この場合には、消費者が打消し表示の内容を正しく認識できないことになります。

したがって、打消し表示の文字の大きさは、本文(強調表示)と同程度の大きさを確保するように注意してください。

(3)打消し表示の配置箇所

打消し表示は、消費者が、それが強調表示に対する打消し表示であると認識できるように表示する必要があるため、打消し表示の配置箇所は、打消し表示であると認識されるようにするための非常に重要な要素です。

この点「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点(実態調査報告書のまとめ)」(消費者庁)によると、打消し表示の配置箇所に問題があるか否かを判断する際は、①強調表示と打消し表示がどの程度離れているのかという点に加えて、②強調表示と打消し表示のそれぞれの文字の大きさ等も勘案されるとされています。

すなわち、上記(1)(2)への対応として、打消し表示の文字の大きさを消費者が認識できるようにしたとしても、打消し表示を本文(強調表示)から離れた場所に表記すると、消費者は打消し表示を認識しないため、強調表示にて受けた印象を打ち消すに足りない(強調表示に記載した効果のみにて違反かどうかの判断がなされる。)とされるおそれがあります。

そのため、打消し表示は、本文(強調表示)の真下など、本文(強調表示)と近接した位置に設置し、当該打消し表示が本文(強調表示)に対する打消しであることが消費者に認識できるような形で記載するように注意してください。

なお、ウェブ広告の場合には、強調表示の場所から、スクロールして初めて見ることができるような場所に打消し表示があっても、消費者は敢えてこれを見に行かないと思いますので、強調表示を打ち消すに足りないとの判断になる可能性が高いといえます。

(4)打消し表示と背景との区別

打消し表示の文字の色と背景の色が同系色である場合など、打消し表示の文字と背景との区別がつきにくいような場合には、消費者はたとえその場所に視線が行ったとしても、打消し表示の存在に気付かなかったり、打消し表示の内容を正しく認識できないおそれがあります。

この点、「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点(実態調査報告書のまとめ)」(消費者庁)によると、打消し表示の文字と背景との区別がつきにくいか否かを判断する際は、➀背景の色と打消し表示の文字の色との組合せに加えて(文字と背景の色が同系色である場合などは、消費者が打消し表示の内容を正しく認識し辛い)、②打消し表示の背景の模様等も勘案されるとされています。

したがって、打消し表示の文字の色は、本文(強調表示)と同じ色かそれより目立つ色を用いることとし、背景と同系色は用いないように注意してください。また、打消し表示の背景が単色ではなく複数の迷彩模様となっている場合など、消費者が打消し表示の内容を正しく認識できないような背景設定はしないようにご注意ください。

以上につき、「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点(実態調査報告書のまとめ)」(消費者庁)

fair_labeling_180607_0004.pdf (caa.go.jp)

宮崎勇樹

アソシエイト弁護士 大阪弁護士会所属

略歴
大阪府守口市出身
平成20年 大阪府立牧野高等学校  卒業
平成24年 関西大学 文学部 総合人文学科 インターディパートメント・ヒューマンサイエンス専修 卒業
平成28年 関西大学大学院法務研究科(法科大学院) 修了
令和2年 弁護士登録・弁護士法人飛翔法律事務所 入所

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