ベンチャー

エンジェル投資家

「エンジェル投資家」とは、創業間もない企業に資金を出資する投資家のことをいいます。本項ではエンジェル投資家について概説いたします。

■ベンチャー企業の特殊性

創業間もない時期は、いまだ経営が安定しておらず、赤字が続くことも少なくありません。また、担保に供することができる資産も乏しいかと思います。

このような事情から、ベンチャー企業の創業間もない時期においては、創業融資を除き金融機関から融資を得ることは困難と思われます。

■金融機関から融資を受ける際の注意点

仮に金融機関から融資を受けられることになったとしても、ベンチャー企業の側で融資を受けるべきかどうかは慎重に判断すべきです。

創業間もない経営の不安定な時期に、毎月必ず元利を返済しなければならない負担は、ベンチャー企業のキャッシュフローを圧迫します。

また、金融機関からの借り入れでは、会社代表者の個人保証を要求されることも多く、このような個人保証をした場合、会社の経営が上手くいかなかった際に会社代表者が負うリスクは非常に大きいものになります。

■直接金融の方法による資金調達とエンジェル投資家

上記のような事情から、ベンチャー企業では、創業間もない段階から直接金融の方法(株式や社債を発行して投資家から直接に出資を受ける方法)によって必要な資金を調達することが有力な資金調達手段となります。もちろん、株式等を渡すことになりますので、当該投資家は、会社の意思決定に関与することができる立場となります。その意味では、どういった投資家(ベンチャーキャピタル等)から投資を受けるかについて、慎重に判断する必要があります。

創業間もないベンチャー企業では、自前の資金や創業融資、ベンチャーキャピタルからの投資以外にも、経営者の親族・知人・ビジネスに共感してくれる支援者等のエンジェル投資家から投資を受けることも多いです。

こうしたエンジェル投資家は、全く見返りを求めない訳ではありませんが、経営者及びビジネスに対して思い入れを持って応援するという立場で投資をしてくれることも多いです。このような場合には、IPOやM&Aといった出口が早急に見えてこなくても、買い戻し等を強く求めることは少ないでしょう。

他方で、ビジネスや投資に精通しているわけではないものの、応援したい気持ちで投資してくれるエンジェル投資家の場合、必ずしもビジネスの内容や合理性を十分に調査・検討した上で投資決定がなされるわけではありませんので、エンジェル投資家との関係性や信頼関係によっては、後々トラブルとなることもあります。

そこで、エンジェル投資家から投資を受ける際には、当該エンジェル投資家との関係性や信頼関係について十分に検討するよう注意してください。

エンジェル投資家は、ベンチャー起業家にとって、最初に支えてくれる応援団ともいえる存在です。なお、日本には、エンジェル投資家が少ないといわれていましたが、最近ではIPOを果たした先輩起業家が後輩の起業家を支援するなどの良い循環も生まれています。

宮崎勇樹

アソシエイト弁護士 大阪弁護士会所属

略歴
大阪府守口市出身
平成20年 大阪府立牧野高等学校  卒業
平成24年 関西大学 文学部 総合人文学科 インターディパートメント・ヒューマンサイエンス専修 卒業
平成28年 関西大学大学院法務研究科(法科大学院) 修了
令和2年 弁護士登録・弁護士法人飛翔法律事務所 入所

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