ベンチャー企業が他の企業と業務提携を行う際には、どのような方法があるでしょうか。ここでは、業務提携及び資本提携について解説したいと思います。
1 業務提携とは
業務提携とは、例えば、自社の技術と他社の研究施設や人員を活用して製品開発を行うなど、それぞれが持つアセットを活用して共同で業務を行うことを言います。ベンチャー企業は、人的・物的な資源に乏しいことも多く、他社のアセットを利用することは自社の事業の成長にアクセルをかける有用な手段にもなります。様々な業務提携の方法があり、主要なものとして以下のものがあります。
販売提携は、互いの販売経路を活用すること(販売店・代理店契約、フランチャイズ契約など)や、商品を提供し合うことです。ベンチャー企業が新商品を開発した際に、他社の販売力を活用することで、一から販路を開拓する時間と費用を節約し、迅速に収益を確保できるメリットがあります。
生産提携は、生産過程や製造過程の一部を委託するものです。ベンチャー企業にとっては、生産のための設備投資や人員確保を最小限に抑えて生産を行い、また、生産量を増やすことができるメリットがあります。
技術提供には、双方が持っている技術を提供する方法(特許やノウハウのライセンス契約など)と、共同開発を行う方法(新技術や新商品の開発を共同で行う契約など)があります。ベンチャー企業にとっては、設備や人員の提供を受け商品の開発費用を削減したり、リスクを分散したり、新たな技術の開発や複合化を行えたりするメリットがあります。
いずれの方法によるとしても、当事者間の実際のビジネスの内容、状況、特殊性を十分に反映しながら、どのような方法・内容にすれば双方がメリットを享受でき、ベンチャー企業にとって利益となるか(自己の短所を補完し、販売面、生産面、技術面でより効率化し、飛躍できるか)を考えて提携の検討をできるかが成功の秘訣となります。
上記の通り、業務提携はベンチャー企業にとって大きなメリットがある反面、業務提携契約における取決め内容によってはベンチャー企業の今後の事業展開が大きく制約される可能性もあるので注意が必要です。例えば、業務提携先以外の第三者との取引を制限する条項が入っていたり、共同開発などでは開発された製品の権利などが全て業務提携先に帰属するような条項が入っているケースなどもありますので、契約交渉時はもとより契約を締結するにあたっては事業の妨げにならないか、一方的に不利益な条項はないかという視点で確認し、提携先企業としっかりと交渉することが重要です。
2 資本業務提携とは
資本業務提携とは、業務提携と併せて、当事者となる企業の一方が、他方の企業の株式を取得することをいいます。また、互いの企業の株式を相互に取得して持ち合う場合もあります。資本関係を結ぶことにより、単なる取引関係である業務提携のみを行う場合よりも、強力な提携関係を築ける場合が多いです。
ベンチャー企業にとっては、より強固な関係を築くことが出来るため、財務や経営レベルで企業同士のシナジー効果を得やすい点がメリットとなります。また、資本としての資金を得ることができますので、その分開発資金や運営資金として活用することも可能となりますし、提携先の新たな経営資源を獲得できるという点においては、更なる発展のための足掛かりとなることも期待できます。
さらに、相手方が有名企業であったり、上場企業であったりする場合など、ベンチャー企業のブランドや信頼の向上にもつながり、商品の販売力の更なる向上や金融機関、ベンチャーキャピタルからの資金の獲得にもつながりやすくなることもあります。
他方、資本業務提携は相手方企業に株式を取得してもらった上で増資を実現する方法ですが、裏を返せば他社を経営に介入させることでもありますし、資本業務提携の場合には提携の条件として、役員派遣やオブザーバーとして役員会への参加を求められることも少なくありません。
そのため、今後の資本政策を踏まえて出資比率をどの程度にするのか、資本業務提携契約において、出資比率を超えてどの程度、提携先がベンチャー企業側の経営へ関与してくることを認めるのか、ベンチャー企業側として中長期の目線で事業展開にどの程度のシナジー効果があるのかなどを資本業務提携の前に慎重に検討すべきですし、場合によっては資本関係を入れずに業務提携のみに留めるという判断もあり得ます。