広告

ステルスマーケティング~注意点と規制の動向~

Q ニュース記事で芸能人のステルスマーケティング(ステマ)が取り上げられていましたが、ステマは違法なんですか?ステマを規制する動きについても教えてください。

1 ステルスマーケティングとは

ステルスマーケティングとは、一般的に「消費者に宣伝と気づかれないようにされる宣伝行為」をいい(日弁連「ステルスマーケティングの規制に関する意見書」)、➀ユーザー等を装って自社を高く評価する「なりすまし型」と、②芸能人やインフルエンサー等に依頼することによって自社を高く評価してもらう「利益提供秘匿型」の2つがあるとされています。

2 ステルスマーケティングって違法なの?

現時点においていえば、日本においてステルスマーケティングを行ったこと自体を違法とする規定はありません(但し、ステルスマーケティングに関する規制の制定の動きについては後述)。

もっとも、ステルスマーケティングを行った結果、当該広告が景品表示法上の有利誤認表示又は優良誤認表示に該当する場合には、違法になると考えられています。

この点、消費者庁も「口コミ情報を自ら掲載し、または第三者に依頼して掲載させ、実際よりも著しく優良または有利であると一般消費者に誤認されるようなものである場合には、景品表示法上の不当表示として問題になる」(「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項(ガイドライン)」としています。消費者庁は「ステルスマーケティング」という用語を直接用いてはいませんが、上記の見解と同様の見解に立っているものと考えられます。

したがって、自ら口コミ形式で記事の作成やコメントの掲載を行う場合のみならず、第三者に依頼してこれを行う場合であっても、その内容が優良誤認表示や有利誤認表示に該当しないように注意する必要があります。

具体的には、口コミ形式で記事の作成やコメントの掲載を行う場合には、当該口コミも広告表示の一部であると認識し、景品表示法に違反しないか否かは、商品説明部分と同程度の注意を払うべきです。記事のリーガルチェックを行う際には、記載した口コミ内容と実際の商品の品質等に差異がないか等について、慎重に判断するようにしてください。

ステルスマーケティングには、他のリスクとして、ステルスマーケティングであると判明した場合には、企業倫理上の批判を含むレピュテーションリスクがあります。また、後述のとおり、今後2023年中を目途にステルスマーケティングの規制を制定する動きがあります。

そのため、実務的には、今のうちからステルスマーケティングにあたる可能性のある行為は避けて、将来の規制の制定に備えるのが良いと思います。

3 ステルスマーケティングに関する規制の制定

ステルスマーケティングは、広告であることが消費者にわからないように広告宣伝を行うという点に本質があるため、消費者は、中立的な記事であると誤認し、実際の商品よりも優良又は有利な内容が記載されていたとしても気付きにくいという問題点があります(過度な効果保証に繋がりやすいと思われます。)。

このような問題意識もあり、日弁連は2017年2月、上記「ステルスマーケティングの規制に関する意見書」を提出し、景表法に基づくステルスマーケティング規制の必要性を指摘していました。

そして、2022年9月に消費者庁に設置された「ステルスマーケティングに関する検討会」では、ステルスマーケティングに関する議論・検討がなされ、同年12月28日に「報告書」を公表しています。

同「報告書」によると、ステルスマーケティングは、景品表示法第5条第3号の告示に新たに指定することで、規制対象とすることが妥当であると整理されています(同報告書30頁)。

また、本検討会において整理された告示案としては、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引において行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの。」と記載されています(同報告書37頁)。

すなわち、広告であることを「隠す行為」自体を規制対象としており、実際にその商品等が表示内容通りの品質・機能・効果等を有していたり、取引条件として消費者に有利であったとしても措置命令が可能となるのではないか(「中身」については考慮されないのではないか。)という懸念があります。

ステルスマーケティングに関するこのような規制が制定された場合、事業者としてはインフルエンサー等に自社の商品・役務等のPRを依頼する場合であっても、それが事業者としての広告であることが一般消費者にわかるようにしておかなければなりません。

どのような表示をしていれば「一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭」といえるのかについては、表示内容全体から判断せざるを得ないものになりますが、同報告書では一定の対策案や考慮要素も示されています(同報告書33頁、同報告書42頁から44頁)。

現時点では、「広告」や「PR」の文字を、①サイトの上部において、②表題の半分以上のサイズにて、③背景色と明確に区別できる色にて表記するという対応をお勧めします。また、SNSにおいては、ハッシュタグに、「#プロモーション」「#協賛」「#提供」「#タイアップ」という文言をつけて、事業主から商品提供や依頼を受けていることを示す表記を行うという対応を行った方がよいと考えます。

(ステルスマーケティングに関する検討会 報告書)

https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/meeting_materials/review_meeting_005/assets/representation_cms216_221228_03.pdf

宮崎勇樹

アソシエイト弁護士 大阪弁護士会所属

略歴
大阪府守口市出身
平成20年 大阪府立牧野高等学校  卒業
平成24年 関西大学 文学部 総合人文学科 インターディパートメント・ヒューマンサイエンス専修 卒業
平成28年 関西大学大学院法務研究科(法科大学院) 修了
令和2年 弁護士登録・弁護士法人飛翔法律事務所 入所

関連記事

カテゴリー

アーカイブ