前回の「3種類の事業承継とM&A」では、親族内に事業を承継させる後継者がいない場合には、役員や従業員への承継よりも外部承継としてのM&Aが実質的な解決策となる旨を述べました。これは、後継者がいない企業が、売り手の立場でM&Aを選択することが増えているという話です。
それでは、M&Aをする理由が、「後継者不在」というのは、買い手企業にとってどのような意味を持つのでしょうか。一般的に、モノを売る場合には、売り手は「良いモノですよ。」といって売ります。これはM&Aの場合も同じです。売り手企業は、「良い会社ですよ。」といって売ってくるわけです。しかし、買い手企業から見れば、「本当に良い会社なら、売らないのではないか。」「ぱっと調べただけでは良い会社に思えるが、実際は粉飾があったり、将来リスクがあったりするので売ろうとしているのではないか。」等の疑問が生じます。
しかし、買い手企業が唯一といっていいほど納得する理由が「後継者不在」です。現在の経営者が高齢になったり体調を崩してしまったりという状況で、後継者がいないのであれば、どれほど良い会社でも売却=M&Aするしか方法がないからです。
かかる意味合いで、「後継者不在」というのは、買い手企業にとっても納得しやすいM&Aの理由と言えるのです。